先日こんなツイートをしました。
はじめてボードゲームを作り、量産する時は「単価が高くても少なめに作る」か「時間をかける覚悟をする」かを選ばなければなりません。
「いくつ売れるか」が全然わからない状態なので、たくさん作って安くして時間をかけて売るか、高いけど試しに少量売ってみるかを選ばないといけないんです
「自作のボードゲームを量産する」というのは、どうしても「お金がかかる(コスト問題)」や「たくさんの在庫を抱える(置き場所の問題)」といったリスクが発生します。
ボードゲームは印刷物であり、印刷物はたくさん印刷すればするほど、単価が安くなります。
しかし、たくさんのものを売るためには、圧倒的な人気が無い限りどうしても時間がかかります。
高くてもいいから少なく作ってすぐに売るか、たくさん作って単価を安くし時間をかけて売るか、個人でボードゲームを作る人が必ず考えることになる問題を少し掘り下げてみようと思います。
まず最初に考えるべきは損益分岐点
高く少なく作る時も、時間をかけて売る時も、まずは、損益分岐点を定めることが大事です。
損益分岐点とは、「モノを作るのにかかった金額と同じ金額を稼ぐのに何個の商品を売ればいいのか」の分岐点のことです。
例えば、原価500円のゲームを100個作ると、元手は5万円必要になります。
このゲームを価格1000円で売った場合、元手の5万円を稼ぐには50個売る必要があります。この50個が損益分岐点です。
価格を2000円にすれば25個、5000円にすれば10個が損益分岐点となりますから、原価に対して販売価格が高ければ高いほど、損益分岐点は到達しやすくなります。
もちろん、値段が高くなればなるほど多く売ることが難しくなってくるので、このあたりは「他のゲームがどのくらいの値段で売られているのか」といった相場感覚を身に着ける必要があります。
ゲームマーケットの最近の相場に関しては、以下の記事で調査してみたので参考にしてみてください。
- 自分の売ろうとしているゲームはいくつ売るのが目標なのか
- 損益分岐点に到達するためにいくつ売る必要があるのか
この2点に注目しながら、読み進めていってもらえればと思います。
単価が高くても少数を売る場合
では、「単価が高くなってもいいので少部数を売る」とはどういうことでしょうか。
これは、在庫を抱えるリスクが少ない、短期間で完売を目指すことができるという点がメリットとなります。
売れなかった時に沢山の在庫を抱えておくのがストレスになる、あまりにも売れ行きが悪ければ次回のイベント参加や通販の委託もしないでおこうといった「ちょっとやってみようかな」という心持の場合にこのメリットは活きてきます。
ただ、原価が高くなる分、損益分岐点に到達するまでに必要な販売数は、生産数に対して多くなってしまうので、儲けを出すのは難しくなるでしょう。
損益分岐点への到達を早めるためにゲームの販売価格を上げる方法もありますが、それをすると売れ行きに悪影響を及ぼす可能性があります。同じ商品なら、値段が安い方が売れやすいというのは当然ですよね。
いっそ売り上げの利益を度外視して、自分の本来売りたかった値段で販売してみて、「自分の作ったゲームは世の中に通用するのか」を試してみるのもアリでしょう。
手ごたえを感じたり、売れ行きの予想が肌感覚で掴めたのなら、次回からは少し多めに作る、損益分岐まで何回イベント参加するなどの目算を立てることで販売計画を練れるはずです。
時間をかけて売る場合
逆に「時間をかけて販売する」というのはどういうことでしょうか。
これは、原価と単価を安くするためにたくさんゲームを作り、複数回のイベントや通信販売や店舗委託販売を使って長期的に販売するという選択です。
原価を安くできるので、商品の販売価格を低く設定しても損益分岐点に到達しやすくなりますし、完売することができれば、たくさんの儲けが見込めるようになるのがメリットです。
数年単位でボードゲームを売り続けるための活動を続ける覚悟を決める必要があります。
もちろん、たくさん印刷するためにはそれだけ多くの元手が必要になりますし、たくさん印刷するとその分損益分岐点に到達するために必要な販売数自体は、少部数の印刷よりも多くなるので気を付けてください。
「10個作って損益分岐点が9個」と「1000個作って損益分岐点が100個」は、損益分岐点の到達だけみれば9個売る方が簡単ということ。
ちなみに私たちの作ったゲーム「Fanatic Witch Hunt」は、この時間をかけて沢山売るという選択肢を取り、3年かけて200個を販売しました。
もう一つの選択肢
それは、「少部数で印刷し、単価も上げない」という美味しいとこどりの選択です。
イベントに20個だけ持って行ってみたいから、20個ピッタリ印刷して持っていく。
ゲームを作る単価は低く抑えて、損益分岐も5個くらいで済むような値段設定!まさにいいとこどりです。
しかし、何のデメリットもなくこんなことはできるはずはありません。
この場合、犠牲となるのは「クオリティ」と「手間」です。
商品の単価を落とすということは、紙の質を落としたり加工する費用を削る、印刷会社が請け負っていた手間を自分で肩代わりするということに他なりません。
クオリティは購入者の満足度の問題もありますが、自分で作った商品に対する自身の満足度に大きな影響を与えます。
安易に安さを追求して作ってしまい、思い描いていた理想のゲームから遠ざかってしまっていて何だかがっかり・・・ということだけは無いように気を付けましょう。
手間に関しては、どれだけ自分が楽をしたいのかと言い換えてもいいです。
カードを種類ごとに分けて1つの山にする(丁合といいます)、箱を組み立てて梱包するといった作業を印刷会社に請け負って貰えれば、楽ですが手間賃がかかります。タイムイズマネーということです。
もちろん、コンポーネントがしょぼくてもゲームシステムが面白ければ、十分に売れる可能性はありますし、販売価格が極端に低ければ人の目に留まる機会も多くなるでしょう。
手間も自分の作るゲームを手作りしている感じが出て楽しめる人もいますので、一概にデメリットばかりな手法ではありません。
自分の財政状況や、作ろうと思うゲーム像に合致した選択をするのが一番です。
まとめ
- まずは損益分岐点を意識し、「何個売れるのか」を意識しておきましょう
- とりあえず作ってみたいだけなら、単価が高くても少部数で作りましょう
- 長期間かけて売る覚悟があるなら、たくさん作って単価を安くしよう
- いいとこどりもできるけど、「クオリティ」と「手間」が犠牲になります
- どの選択も一長一短。自分の販売戦略に合致した手法を選ぼう
全くの初参加の場合は、ほんとに売れる数がぜんっぜん分からないと思うので、なるべく少数にして「腕試し」のつもりで販売してみることをオススメします。
安価で生産する方法に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
この記事が一人でも多くのボードゲームを作ろうと思っている方の参考になれば幸いです⭐
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